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第9回 リチウムイオン電池の反応速度と活性化エネルギー

こんにちは。
前回のコラムでは、温度の違いによってリチウムイオン電池に生じるいくつかの反応の速度が変化し、その結果として電池容量及び劣化速度が変わる事を説明しました。今回はこの現象の背景として電池内部のリチウムイオン分子の状態がどの様に変化しているかを考えたいと思います。

さて、一般的に分子は図1の様に常にランダムな動きをし(ブラウン運動)、この運動エネルギーの統計的な大きさ(速度)は絶対温度に比例します。この場合の統計的という言葉は、ばらつきと密度を考慮した、という意味と考えてください(ばらつきは1個1個の分子のブラウン運動の速度が異なる様子で、密度は単位体積中の分子数の事です)。

図1.分子のブラウン運動

次に、反応が起こる為には反応分子に一定のエネルギーが供給され活性化する必要があります。反応はよく、図2の様なエネルギーの山を越えるイメージで考えられます。山を越える為には山の高さ分のエネルギー供給が必要で、このエネルギーは活性化エネルギーと呼ばれています。

図2.反応の経過と活性化エネルギー

このエネルギーは主に分子の運動エネルギー、すなわち前述のブラウン運動のエネルギーから供給されます。従って、温度が上がる事はすなわちブラウン運動のエネルギーが統計的に上昇することなので、図3の様に低い温度では山越えできる分子が少なく、高い温度では山越えできる分子が多くなります。反応速度は定義上、時間当たりの山越えする分子の数の事であり、以上の関係から、温度が高くなると反応が速くなる事がわかります。

図3.温度による分子エネルギー分布の変化と活性化エネルギーの関係(イメージ)

リチウムイオン電池の反応においてブラウン運動しているのはリチウムイオンです。ここまでは、ブラウン運動の場である媒質を無視した話になっていましたが、実は媒質の粘性がブラウン運動に対する抵抗力となります。通常リチウムイオン電池の中のリチウムイオンの媒質は電解液なので、この電解液の粘性がリチウムイオンのブラウン運動に影響します。温度が高くなると一般的に液体の粘性は下がりますので、ブラウン運動はより活発化することになります。

今回の話をまとめると、リチウムイオン電池は温度が高くなる事によって直接的に、電解液の粘性低下に伴って間接的に、リチウムイオンのブラウン運動が活発化します。そして反応の活性化エネルギー以上のブラウン運動エネルギーをもつリチウムイオンの量が増えることで反応速度が上昇します。

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