ニュース一覧 News

 


ニュース

    日本缶詰協会主催第56回技術大会発表内容
 
 
 
 
更新日:2008年5月9日
 
 

○ 発表テーマ
  マイクロ波による食品加熱のシミュレーション解析に関する基礎研究

○ 発表者
  総合研究所第3研究室(工博)高富室長
○ 発表日・場所
  2007年11月20日
  都市センターホテル(東京都千代田区平河町2-4-1)


要旨

 青山学院大学理工学部電気電子工学科の橋本修研究室と共同で、電磁界解析※1 シミュレーションを応用した食品加熱の温度分布の解析手法を研究し、特許出願に至っているが、今回その実用性の見通しを得ることができた。   ここではコンピューターシミュレーションの有効性と加熱ムラ抑制方法について報告する。
※1:電子レンジ内で発生する電波の分布を可視化する方法)

コンピュータシミュレーションの方法

 食品が電子レンジに使われているマイクロ波を吸収すると自己発熱し温度が上がり、吸収されたマイクロ波の電力分布と食品の温度分布に相関が高いことに着目し、吸収電力分布シミュレーションプログラムを用いた。
 食品の形状・容量・電気特性(誘電率)とマイクロ波発生器の形状・マイクロ波の強さ(W)・周波数・加熱時間などの条件をシミュレーションプログラムに入力して、食品に吸収されるマイクロ波(吸収電力分布)を計算する。(擬似カラー映像で表示)

コンピューターシミュレーションの有効性を実証する方法

 加熱状態を観察しやすいモデル食品(下記)に、電子レンジに使われているマイクロ波を発生するテスト装置を用いてマイクロ波を照射して加熱された状態(温度分布)を観察する。(下記(モデル食品の写真)に観察結果を示す。)
 温度分布を示す観察結果(モデル食品の写真1)と吸収電力分布シミュレーションプログラムで計算した吸収電力分布(擬似カラー映像1)とを見比べて、両者の傾向が似ているか調べる。

テスト装置
テスト装置

マイクロ波の強さ     600W
〃   周波数    2,450Hz
加熱時間          15秒


実験でモデル食品を入れるプラスチックカップ

モデル食品
 7%でんぷん溶液(塩分を1%添加)30gを
 プラスチックカップに入れた。
 内部の対流による熱の拡散を抑える為、
 粘度の高いでんぷん溶液を用いる


観察部位

高温になると白色に変色するヨウ素を添加し、
モデル食品の上部表面の白色部分の状態を観察する。


温度分布観察結果と吸収電力分布

モデル食品の写真1
温度分布観察結果
(モデル食品の写真1)
擬似カラー表示1
吸収電力分布
(擬似カラー表示1)

 温度分布観察結果(モデル食品の写真1)で白色になっている高温部分(モデル食品の写真1中の白点線部分)に対して、吸収電力分布(擬似カラー表示1)でも、同じ部分(擬似カラー表示1中の白点線部分)で電力吸収が高くなっている(赤色表示)。 両者は非常に近似した傾向を示した。

さらに解析精度を向上させる温度分布シミュレーション

 吸収電力分布シミュレーションプログラムに伝熱現象の3要素である熱伝導・対流・熱放射を考慮した解析プログラムを組入れ(特許2件公開済)、解析精度を向上させた。


温度分布観察結果と温度分布シミュレーションの結果

モデル食品の写真2
温度分布観察結果
(モデル食品の写真2)
擬似カラー表示2
温度分布シミュレーション結果
(擬似カラー表示2)

 吸収電力分布シミュレーションの結果よりもこの解析プログラムを組入れた方が温度分布観察結果(モデル食品の写真2)に近似したシミュレーション結果(擬似カラー表示2)が得られている。
 また、温度分布観察結果(モデル食品の写真2)で中央部分(モデル食品の写真2中の白点線部分)で高温部が円形状に集中しており、温度分布シミュレーション結果(擬似カラー表示2)が同様になっていて加熱結果を再現している。
 伝熱現象の3要素である熱伝導・対流・熱放射を考慮することによって解析精度が向上した事を示している。


加熱ムラ抑制方法(マイクロ波を回転:円偏波)

  一般の電子レンジに使用されているマイクロ波は直線偏波と呼ばれる平面波である(下図左)。 このマイクロ波を回転させる(円偏波と呼ぶ 下図右)ことで食品内部に照射され吸収される吸収電力分布を分散・均一化させることを考えた。

直線偏波
直線偏波(一般のマイクロ波)
マイクロ波を回転→
円偏波
円偏波
マイクロ波を回転させるイメージ図


円偏波の効果を温度分布観察結果で確認

モデル食品の写真3
直線偏波での温度分布観察結果
(モデル食品の写真3)
モデル食品の写真4
円偏波での温度分布観察結果
(モデル食品の写真4)

 温度分布観察結果を見ると直線偏波の場合(モデル食品の写真3)よりも円偏波の場合(モデル食品の写真4)の方が均一化されている。


吸収電力分布シミュレーションの結果を比較

モデル食品の写真3
直線偏波での吸収電力分布
(擬似カラー表示3)
モデル食品の写真4
円偏波での吸収電力分布
(擬似カラー表示4)
吸収電力のスケール
吸収電力の
スケール

温度分布観察結果(モデル食品の写真3・4)と吸収電力分布(擬似カラー表示3・4)とは、非常に近似した傾向を示した。


加熱ムラ抑制の状況

 吸収電力分布を直線偏波の場合(擬似カラー表示3)と円偏波の場合(擬似カラー表示4)とで比較してみると、高温部に相当する吸収電力の大きい部位が、直線偏波の場合には存在するが円偏波の場合には存在しない。  ( 上図擬似カラー表示3の赤色部分、下図のスケール横軸0.2~0.3W/m )

吸収電力分布画像でのスケール

 吸収電力の大きい部分がないという事は加熱ムラ(温度範囲)が小さい事を示しており、直線偏波の場合(0~0.3W/m3)と比較して円偏波の場合(0~0.2W/m3)は吸収電力の幅が約30%低減した。



まとめと今後の展開

 この研究により,電子レンジによる食品の加熱現象の解析やマイクロ波を利用した殺菌装置の開発における検証までのスピードアップが可能となった。
 また、構築した温度分布シミュレーションプログラムでは、伝熱現象の3要素(熱伝導・対流・熱放射)を考慮しながら温度分布を直接解析し、実際の加熱結果をシミュレーションすることで従来まで困難であった加熱のメカニズムを短時間で精度よく解明することが可能となった。
 これらの技術を応用・発展させ、
  ・マイクロ波による食品の加熱現象の迅速解析
  ・均一加熱に有効な加熱装置の設計指針,食品容器の設計
 などに応用していく予定である。