要旨 青山学院大学理工学部電気電子工学科の橋本修研究室と共同で、電磁界解析※1 シミュレーションを応用した食品加熱の温度分布の解析手法を研究し、特許出願に至っているが、今回その実用性の見通しを得ることができた。
ここではコンピューターシミュレーションの有効性と加熱ムラ抑制方法について報告する。 コンピュータシミュレーションの方法 食品が電子レンジに使われているマイクロ波を吸収すると自己発熱し温度が上がり、吸収されたマイクロ波の電力分布と食品の温度分布に相関が高いことに着目し、吸収電力分布シミュレーションプログラムを用いた。 コンピューターシミュレーションの有効性を実証する方法 加熱状態を観察しやすいモデル食品(下記)に、電子レンジに使われているマイクロ波を発生するテスト装置を用いてマイクロ波を照射して加熱された状態(温度分布)を観察する。(下記(モデル食品の写真)に観察結果を示す。)
温度分布観察結果と吸収電力分布
温度分布観察結果(モデル食品の写真1)で白色になっている高温部分(モデル食品の写真1中の白点線部分)に対して、吸収電力分布(擬似カラー表示1)でも、同じ部分(擬似カラー表示1中の白点線部分)で電力吸収が高くなっている(赤色表示)。 両者は非常に近似した傾向を示した。 さらに解析精度を向上させる温度分布シミュレーション 吸収電力分布シミュレーションプログラムに伝熱現象の3要素である熱伝導・対流・熱放射を考慮した解析プログラムを組入れ(特許2件公開済)、解析精度を向上させた。 温度分布観察結果と温度分布シミュレーションの結果
吸収電力分布シミュレーションの結果よりもこの解析プログラムを組入れた方が温度分布観察結果(モデル食品の写真2)に近似したシミュレーション結果(擬似カラー表示2)が得られている。 加熱ムラ抑制方法(マイクロ波を回転:円偏波) 一般の電子レンジに使用されているマイクロ波は直線偏波と呼ばれる平面波である(下図左)。 このマイクロ波を回転させる(円偏波と呼ぶ 下図右)ことで食品内部に照射され吸収される吸収電力分布を分散・均一化させることを考えた。
円偏波の効果を温度分布観察結果で確認
温度分布観察結果を見ると直線偏波の場合(モデル食品の写真3)よりも円偏波の場合(モデル食品の写真4)の方が均一化されている。 吸収電力分布シミュレーションの結果を比較
温度分布観察結果(モデル食品の写真3・4)と吸収電力分布(擬似カラー表示3・4)とは、非常に近似した傾向を示した。 加熱ムラ抑制の状況 吸収電力分布を直線偏波の場合(擬似カラー表示3)と円偏波の場合(擬似カラー表示4)とで比較してみると、高温部に相当する吸収電力の大きい部位が、直線偏波の場合には存在するが円偏波の場合には存在しない。 ( 上図擬似カラー表示3の赤色部分、下図のスケール横軸0.2~0.3W/m3 )
吸収電力の大きい部分がないという事は加熱ムラ(温度範囲)が小さい事を示しており、直線偏波の場合(0~0.3W/m3)と比較して円偏波の場合(0~0.2W/m3)は吸収電力の幅が約30%低減した。 まとめと今後の展開 この研究により,電子レンジによる食品の加熱現象の解析やマイクロ波を利用した殺菌装置の開発における検証までのスピードアップが可能となった。 |
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